神田神保町 CONTAX T2
1962年、奈良原一高がパリのファッション誌からオファーを受けて渡仏した時、彼は半年の間何も撮らず、ただブラブラとパリを観察して過ごした。
初めて行く世界では見るもの全てが新鮮に見えてしまって自分の価値基準がもてない、というのがその理由だった。
初めて出くわした被写体の新奇さに我々はつい目を奪われがちだ。しかし、そうした新奇さは、たぶん他の人も同じように感じてシャッターを押すであろう新奇さに違いない。つまり初めて見る被写体の新奇さは、時間の経過とともに真っ先に腐る部位なのだ。腐りにくい部位は、最初の新鮮さが薄れた頃に自分なりに発見するしかない。写真と復讐は冷めた頃が一番旨いというわけだ。
このエピソードの教訓は、お気楽にすぐシャッターを押しちゃいけないってことだが、しかし、それがわかっていても、お散歩スナッパーはそうも言ってられないところが辛い。
CONTAX T2